外国人労働者を拡大するなら、人材の流動性を否定することになる。それは解雇規制の緩和に絡む話しだと思う。
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衆院法務委 入管法案、100%移行の業種も
https://mainichi.jp/articles/20181122/k00/00m/010/144000c
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「実習生が帰国後に実習と同じか同種の仕事に就いた割合は過去3年で7~8割だったとの厚生労働省の調査がある」
前回のブログで帰国した外国人労働者の職場が無いと書いたが、実際には7~8割の外国人労働者が同種の仕事に就いているらしい。
なるほど、そうなのかと感心する一方で、以前に見かけた帰国しても違う職業に就くと言う記事は何だったのだろうかと疑問に思う。
さて、7~8割の外国人労働者が同種の仕事に就いているから万々歳になるかというと、そうではない。
どこに統計トリックが潜んでいるのかが、逆に気になる。
対象としているのは、外国人技能実習制度なので、それ以外の外国人労働者は含まれていないのだろう。
例えば、外国人留学生などはコンビニや飲食店でバイトしているらしいが、それはどうなのだろうか。
体のいい労働者として見做されているのではないか。そもそも就学ではなく本当は就労が目的で来日しているとの話しもある。まぁ、本当のところは分からないのだが、どうにも疑問に感じる。
また、自国に働き場所があるのなら、なぜ来日したのだろうかと疑問にも思う。
本当に、国際貢献として相手国の産業に寄与しているのか、もしくは、相手国と産業の交流が活発になっているのか。
例えば、交流が活発になることにより、相手国と協力して一大産業を作り上げるだすことも考えられるが、実際のところはどうなのだろうか。
やはり、安い労働力としか見ていないのだろうか、疑問ばかりが湧いてくる。
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古賀茂明「安倍政権の外国人単純労働者の受け入れ拡大は経団連のための低賃金政策だ」
https://dot.asahi.com/dot/2018111800012.html
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「先進国になると、労働条件を向上させる方向に舵を切らなければならなくなる。その根底には、生産年齢人口の減少で労働者の立場が強くなるということもあるし、経済的に豊かになって、社会全体に余裕が生まれ、より人間的な生活を保障すべきだという国民の声が高まるのに対して、政治家や企業経営者が対応せざるを得ないということもある。
賃金を上げ、休暇を増やし、労働時間も短くすることにより、全体としての労働条件は向上してくる。しかし、それは、企業にとっては、負担増である。その負担を生産性の向上によって吸収できれば良いのだが、そうした活力を失った産業・企業では、徐々に対応力を失い、労働条件向上の流れを何とか止めたいという欲求が高まる。大企業はもちろんだが、むしろ、企業体力の弱い中小企業では、より早い段階からこうした声が出てくる。
こうした国内の構造的要因に加え、80年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた日本企業が、90年代以降、急速に国際競争で優位性を失うという状況が生じた。本来は、ここで、日本の大企業は、労働条件を引き上げても競争できるビジネスモデルへの転換を図らなければならなかったのだが、そうはしなかった。イギリス、ドイツ、オランダなどでは、その転換に20年以上を費やしたが、日本は最初からそれを諦めた。そして、労働コスト引き下げで競争力を維持するという、より安易な方向に逃げようとしたのである。
95年に日本経営者団体連盟(日経連。主に労働問題を扱う大企業経営者団体の集まり。後に経団連に統合された)が出した、有名な「新時代の『日本的経営』」というレポートはこの動きを象徴するものだ。このレポートでは、正社員(正規雇用)中心の雇用から、残業代ゼロ法案でも問題とされた高度専門職的な雇用とパート・派遣などの切り捨て用雇用を併用した新たな雇用戦略を取るべきだと提唱していた。今から20年以上前に大企業の経営者たちが描いた設計図通りに日本の雇用が動いてきたということになる。」
賃金が安いや労働環境が悪いなどの理由で、労働者が忌避する産業は衰退するしかないと思う。
利益が上がる産業にシフトしなければならないのに、それができずに自らの首を絞めているのが日本であると思う。
「低賃金の温存とは、低生産性の温存と言い換えても良い。
「人手不足」と言うが、今、国会に出されている「単純労働者受け入れ法案」の対象となる14分野のうち、賃金、休暇、労働時間などで、他の分野に比べて非常に良い条件を提示している分野がどれだけあるのか。もし、他よりも低い条件しか提示できないなら、そこに人が来ないのは人手不足の問題ではなくて、単に、低生産性の問題である。この状況は、自民党が採ってきた経営者のための低賃金政策の当然の帰結と言って良い。」
「今、日本に一番必要なのは、外国人単純労働者ではなく、高い労働条件を提示できる経営者だ。それができない経営者には退場を迫るべきだろう。」
それができない政治家にも退場を迫るべきだろう。
安く人を使って利益を上げるだけなら、何のために経営者がいるのか分からない。
本来は、産業を発展させなければならないのに、現実は産業を衰退させている。
産業を衰退させる経営者はいらないし、そんな政治家もいらない。
外国人労働者を受け入れる産業は衰退しているといえる。
そんな業界に日本の若者が就職しないことを祈るばかりである。
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ついでなので、他にも思っていることを書く。
外国人労働者が増えることで、日本人の賃金が下がるという話しがある。
誰でもそう考えるだろう。
賃金が下がるということは、消費も下がるということだ。
つまり、政府はデフレ脱却を目指しているが、実際にはデフレを促進していることになる。
そうであるならば、政府はデフレ促進を宣言しなければならないと思う。
つぎに、人手不足により労働者が今よりも良い職場に移るのではないかという話しがある。
つまり、人材の流動性が促されるわけだ。
以前、人材の流動性を高くするために退職規制を緩和するという話しがあったが、現状は人材不足により規制緩和する必要は無いように思える。
しかしながら、政府は外国人労働者を増やして、人手不足を解消しようとしている。
人手不足が解消されては、人材の流動性が促進されなくなってしまう。
外国人労働者を拡大するなら政府は、人材の流動性を否定することを宣言しなければならないと思う。
更に、退職規制の緩和は、外国人労働者の拡大と矛盾しているため、今後話題にしないことを宣言しなければならないと思う。
つぎに、外国人労働者の滞在期間が10年になる可能性もあるようだが、何だか少しづつ期間が増えていってるように思える。
移民政策では無いと言っているが、期間がどんどん長くなれば、それは移民政策と同じではないのか。
これは政府の十八番である、名ばかり店長ならぬ、名ばかり国際貢献のように思える。
政府は「名ばかり○○」を今後作らないことを宣言しなければならないと思う。
政府は、どこに向かっているのだろうか、ブレているというか、日和見というか、そんなご都合主義が通用するのは漫画ぐらいだろう。
「バトルで誰かを救ったつもりですかぁ。世界を救った気持ちになりたいだけのくせにぃ。うわぁ、救えないなぁ、救われないなぁ。救ってあげますよ、現実から」(ブレ×ブレ)
(´・ω・`)ショボーン
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